愛犬 コロ

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 幸福な生活が、平穏無事に過ぎていく。

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 今日も、おじいさんと一緒に散歩に出かけた。
 すると、おじいさんの友達と出会った。
「コロのおかげで、長生きできてるんだから、大切にしなさいよ」
とか言ってる。
「皆から、そう言われてるよ」
そこまでは、良かったんだ。その後の話が長いこと、長いこと。そんなに話すネタがあるもんだと思ったよ。
  だが、ついにガマンの限界。リードごと逃げてやれぃ。追いかけようと思っても、犬の方が数倍足は速いよ。脱出成功。良かった。ようやく年寄りの長話から解放される。
「コロ。コロ」
おじいさんが呼んでいる。けど、今すぐ戻るわけには、いかないや。
「コロ、来ないですね。息子さんに電話してみたら…」

「電話してみるか」
「何かあったの?仕事中なんだけど…」
「散歩してたら、コロが逃げ出したんだよ。いくら呼んでも来ないから、チョット来てくれないか」
「しょうがないなぁ。今行くから」
「仕事中に悪いな」
「本当だよ。で、どこで逃げたの?」
「この辺りなんだよ。鈴木さんと話をしていたら、あっという間にいなくなったんだよ」
「ふーん。この辺りで…。コロ、コロ」
ありゃ、飼い主まで来ちゃったよ。まずいな。どんなお叱りを受けるかなぁ。出て行かないわけにはいかないよなぁ。チョット嫌がった振りして出ていこうっと…。
「すぐに出てきたじゃない!俺、仕事に戻るから」
あれっ?それだけ?何だよ、!感動の対面とかないわけ?
                         (写真はイメージです。)