愛犬 コロ

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 僕も。やっとこの家になれ、自分の居場所を見つけることができた。
 家族の中で、ボクは三番目。一番は、飼い主のお兄さん。二番目は、その飼い主の父親のおじいさん。毎日午後、ボクを散歩に連れて行ってくれる。そして、三番目がボク。何たってみんなから可愛がられるスーパーアイドルなんだから……。四番目は、ボクを捨てろといったおばあさん。ご飯を持ってきてくれるんだけど、ご飯を持ってきた時も、すぐには食べないで(本当は、すぐ食べたいんだけど)じっと我慢しているんだ。
 ボクは、飼い主に気に入られようと、車から降りてくると姿が見えないうちから、ワンワンと、しっぽを思い切り振って、愛想を振りまいてあげるんだ。
 そうすると、遅くなっても、ボクの大好きな骨やジャーキーを持ってきてくれるんだ。やったね。

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 でも、この前、かなり遅くなって帰ってきた時に、いつもと同じようにしていたら、ボクをそっと抱き上げて優しく言うんだ。
「コロ、君が私を慕ってくれるのは嬉しいけれど、ご近所のこともあるから、午後七時を過ぎて帰ってきた時には吠えないでくれるかな」
ボクはわかったと頷いた。
 飼い主は、犬にそんなことを言っても無理だろう、と思っていたらしい様子だったが、ボクを見損なっちゃ困るよ。まったく……。
 次に遅く帰ってきた時には、吠えてあげなかった。すると、眠ったのかどうか確かめに来たんだ。ボクは、この時とばかりに、ピンと立って、シッポを振っていたんだ。
「コロ~。お前はなんて、賢いやつなんだ。天才犬だぞー」
チェッ、今頃わかったのかよ。ボクは嬉しいような、悔しいような気持ちで見つめていたんだ。
 それから飼い主は、ボクがいかにすばらしい犬であるかを、みんなに自慢して歩いている。
 えっへん。
                  (写真はイメージです。)